株式会社ミロクテクノウッド
生産部
大井隆雄
木材ハンドルの真価を引き出し、
その魅力を世界に伝える
MIROKU QUALITY
ミロククオリティ
匠インタビュー
TAKUMI INTERVIEW
株式会社ミロクテクノウッド
生産部
大井隆雄
木材ハンドルの真価を引き出し、
その魅力を世界に伝える
「職業柄、木製品を見るとつい木の種類や加工方法を見てしまう」という大井。木材加工後の導管の目止め、塗装や研磨、検査などの工程を担当している。現在は、ハンドル制作のかなりの部分を自動化しているが、どうしても機械化ができない部分を担っている部署だ。
目止め作業は、「自動化ができない工程」のひとつ。木材の導管は大きさや深さ、角度が一つひとつ異なるため、熟練の職人が手作業で穴を埋めていく必要がある。指先や手のひらなど、自らの手の全体を駆使して的確なポイントにあてがい、形状を確かめながら目止め剤を塗りこんで導管を平らにしていく。完全に平滑にしておかなければ塗装の際に不具合が生じてしまうので、無垢木材の扱いに精通した匠の技が必須となる。また、塗装の前に行う研磨は塗り重ねの密着度を高め、検査では照明の角度や距離によって見えない傷などを目視で発見する。そして塗装は、塗料を塗り重ねることで指輪などが当たっても傷つかない膜厚を確保し、変色を防止する。滑らかに塗装をし、表面を鏡面に仕上げるためには、大敵となるゴミやホコリを寄せ付けないことも大切。そのため、日頃のクリーン活動も欠かせない。地道な作業の積み重ねが手になじむ木製ハンドルの品質を保持し、お客様から高い評価を得ているのだ。
大井は、入社当時は塗装班に配属され、10年ほど塗装に従事していた。先輩の塗装を見て技を盗み、実践で教えてもらいながらまた先輩の技術を見て......という日々をひたすら続け、技術と経験を積んでいった。
「木材は天然素材ですから、同じものはありません。それを同じように加工して同じクオリティのものに作りあげることはとても難しい作業であり、やはり機械ではできないところです。しかし、人間の経験に基づいてそれぞれを加工していけば、同じものを作ることは不可能ではなくなると思います。そこに職人の技術が必要とされる理由があるし、我々が作業する意味があるのです。『難しいものを可能にするにはどうしたらいいか』を常に考えて仕事に取り組むこと。これが自分のこだわりです」と熱い想いを語る大井は、「仕事が楽しくて仕方がない」と目を輝かせる。ミロク職人の多くから聞かれる「仕事が楽しい」という言葉。何年同じ仕事を続けていても続く「楽しさ」は、自分の仕事への飽くなき探究心にあるのだろう。その気持ちを持ち続けることもまた、「匠」と呼ばれるようになる必須条件と言える。
大井は、木材の変化にいち早く対応できるように前工程と後工程の連携をしっかり行い、加工従事者が一丸となって取り組むように心がけている。そういった連携を可能にするにはチーム全員がそれぞれに試行錯誤し、向上していく姿勢が大切だ。連携のとれた優れたチームには活気が生まれ、さらに結束力を強めていく。これもまた、ミロクの伝統に他ならない。
「自分自身もまだ不明点や未経験なことも多いけれど、だからこそ、今後も学び続けていきたいです。先人の技術を学び、追いついて追い越して、そして世界中に『木製品の素晴らしさ』を伝えていきたいです。スポーツ車などでも、当社で製造した木のハンドルを使った車がありますから、今まで材質に興味がなかった人にこそ、木材ならではの手なじみの良さ、軽いことによる素早い動作感などをぜひ味わってみてほしいです」。そんな大井の「匠の手」にかかり、木材としての真価を限りなく引き出されたミロクハンドルは、多くの人を魅了してやまない。